世の中には、不動産を担保にお金を貸してくれるサービスや制度があります。
資金使途が自由なものもあれば、事業資金として貸し出してくれるものもあります。
ただ、お金を借りる時というのは大概、返す時の条件を確認していないものです。
借り入れ先が金融機関の場合なら、そんなに支障は出ないでしょう。
ただし、街金・闇金と言われるところでなくても気を付けてください。
貸金業ではない一般有名企業が出資してくれる場合でも、驚くような条件を言い渡されることがあるのです。
今回はそんな、コンビニエンスストアの企業統合による突発的な出資でお困りだった方のお話しです。
≪目次≫
お客様背景
きっかけは、金融機関からのご紹介。
事業資金として不動産担保ローンでお金を貸しているお客様のお困りごとのご相談。
不動産担保ローンですと住宅ローンと違い、他の方がお金を貸して1番抵当権を設定していて、例え2番抵当権での設定となってもお金を貸してくれます。
この1番抵当権設定者(債権者)が、後に頭を抱える原因となるのです。
お客様は、その当時でコンビニエンスストアを2店舗経営しているオーナーさん。
どのコンビニエンスストアとは言いませんが、コンビニエンスストア企業同士による企業買収による影響で、当然に全店舗、内装変更工事をしなくてはならなくなりました。
この内装費用の捻出が、どうにもならなくなっているというのです。
資金計画の確認
ご相談当初は、経営状態が芳しくありませんでした。
現金が期待できないからこそのご相談。
自宅売却でしかまとまったお金の準備が出来ないことが確認できました。
時間が余り無いとは言え、必要資金に到達するには不動産買い取り業者により取引価格では足りません。
不動産査定をしたところ、一般市場への売り出しで2,000万円が正当な価格であることがわかり、資金計画が成り立ちました。
コンビニエンスストアを始める際には、営業権を企業へ納めることになります。
これが500万円。(一番抵当権で登記)
次に事業資金で借りた紹介元である金融機関。
1,000万円。(第二抵当権)
そして、今回の目的である店舗内装費。
これらを差し引いても、少しは気持ちに余裕が出るお金が手元に残ります。
お客様からご快諾を頂き、売却活動へ。
売却活動は、すんなりと。だが、しかし…
売り出しを始めると、意外にも直ぐに他社の不動産会社が買主様を見付けてくださいました。
相場で売り出すと、その妥当性は地域を理解している方ならば理解は早いものです。
買主様は、隣り近所の方が甥っ子さんに声を掛けてくださって見付かったそうです。
売買契約の締結もスムーズに事は運びました。
ところが、契約締結後に1番抵当権の債務者に連絡したところ、問題が出てしまいました。
抵当権抹消手続き書類の作成依頼に必要な期間の最終確認。
すると…
500万円の一括事前支払いが条件、と。
通常、金融機関からお金を借りた場合、債権者に残債額を返済した同日に抵当権抹消手続きを法務局に申請します。
その為、抵当権抹消手続き書類は事前に用意(作成)してもらうものです。
それが、お金をまとめて返してから書類を作成し始めるという話し。
書類作成に時間を要することは、当然に分かっていますので作成期間には十二分に余裕を持ったご連絡でした。
それが、事前払いの条件であることには胆が冷えました。
理由を伺い、交渉をお願いしても変わることが無かったからです。
金融機関相手ならば、他の金融機関の事例等で道は拓けます。
しかし、1企業内での規定となると独自性の主張は崩しにくいのが、弱ってしまうところです。
実績、経験といったものは、時に通常の手順では特殊案件ごとの穴により後手に回ることがあります。
自己フォローでは無いのですが、正直言えば、後手に回るのは仕方のないこともあります。
ですから、もしも、あなたが頼んでいる不動産会社が対処に後手に回る事態になっても、それ自体をどうか責めずにいて頂けたらとも思います。
大事なことは、後手に回ってもカバー出来るのか!?
ここだと思います。
貸しを、頭を下げて使う
抵当権が抹消できなければ、買主様からお客様はお金を受け取ることが出来ません。
とは言え、無担保で500万円も貸し出してくれる経営状況でもなければ、物件引き渡し予定日までの時間もありません。
不動産会社が直接お客様にお金を工面して、物件を借りてもらう、貸せるようにする、物件を買わせる、売らせることは違法営業行為です。
「とにかくお金を自分で用意してきてくれ」
と言って、街金・闇金に行かせるなんて言語道断です。
考えに考え、たった一人だけ、可能性を掛けられる人物に思い当たりました。
私の知人に、不動産業と金融業の認可を持っている者がいたのです。
これまで、幾度となく案件を紹介し売り上げ貢献もした間柄。
お客様事情を説明し、私が頭を下げ、何とか500万円もの金額を貸してもらえることになりました。
さすがに、事情が事情ゆえに応じてくれましたが、今回の件を機に今後も甘えたいとは私は思いません。
先方にとって、ビジネスとして応じる必要があるものではありませんからね。
普通の不動産会社、特に大きな会社になればなる程に、応じられるものではないでしょう。
下手をすれば、担当者なり責任者なりの進退に大きな影響を及ぼす事案だからです。
これがクリアになったことで次に進むことが出来ました。
…そう、この事例の困難は、これだけでは無かったのです。
2つ、3つと同時に困難が起こったのです。
それはまた、次のお話しで。
【文化の違いは国だけではない。世代、立場、認識の違いも丁寧に。相続事前対策にも通じる不動産売買要件】
まとめ
いかがでしたでしょう?
お金を借りる時の確認事項の大切さや相談するタイミングの重要性は伝わってでしょうか?
今回の事例のご相談。
もしも、直接のお問い合わせだったら…
金融機関からのご紹介だったとしても…
私に話しが回って来た時に
「1番抵当権の抹消に事前払いが条件で、金融機関からお金が借りられないから。」
と言われていたら、請けていなかったでしょう。
お金の借りどころを協力するお仕事ではありません。
では、なぜ、コラムに書いたのか?
それは…
●抵当権抹消には手続き書類の用意に時間が掛かること。
●物件を売却するしか、まとまったお金を用意できない場合のことを確認する。
(お金を借りる際に、返済時の確認事項の提唱。)
●毎月の返済義務が無かろうと、物件の売却と同時での返済対応が不可能な借り入れは、早期完済を目指すこと。もしくは、せめて無担保ローンでも借り入れ可能そうな金額(100~200万円)まで繰り上げ返済しておくこと。
●お金が枯渇してくる前に事実確認や計画を立てておくこと。
これらをお伝えしたいと思ったからです。
対応したことがあるから、同じ状況でどうにもならなくなったら相談してください、というニュアンスは一切含んでいません。
今回のような障害に見舞われ、誰も手立てが打てないことにならないように、早め早めの対処のお願い致します。
多くの案件をご紹介くださっている取引先からのお願いでもありました。
だから、相続事前対策ではありませんでしたがお請け致しました。
お金の工面も、一度きりであろうという暗黙の了解を汲んでの貸し出しでしょう。
この点を、何卒、ご理解くださいますようお願い申し上げます。