売買契約の新ルール!?売れなかった相続物件に続々と善意の購入申し込み!

前回までの2つの事例は、売却の流れがマイナスに働いてしまったお話しでした。
売却の流れは、マイナスもあれば当然にプラスの流れが生まれることもあるものです。

今回はそんな、プラスの流れの話し。
流れの妙を楽しんでもらえたらと思い、筆を執りました。

 

≪ 目次 ≫

1.案件の経緯

2.物件内容

3.見知らぬ第三者が占拠

4.どんどん安くなっていく価格交渉

5.400万円以下の売買契約の新ルール

6.なんだかんだありましたが

 

案件の経緯

願い

横浜市港南区にある相続物件の売却依頼。
取引先の事務員さんからのご相談でした。
「おばあちゃんが持っている物件の話しなんですが、体調的にそろそろ危なくて今のうちに杉浦さんに相談しておこうかな、て・・・」

お祖母ちゃんは、「あなたに全部持っていってほしいの。」と言っているそうですが、1人で全部もらうのは嫌だから他の人にも分配しているようでした。

多くの資産があるわけではなかったので、相続税の計算などはありませんでした。
司法書士に頼んで遺言書の作成に取り掛かり、私は不動産の登記状況の調査へ。

物件の登記簿謄本を見ると、名義はお祖父ちゃんのまま。
相続登記も必要なので司法書士にお願いし、事前準備を整えることができました。

時が経ち、相続が発生。
物件は直ぐに売却する意向に変わりはなく、話しは具体的に売却の依頼となりました。

 

物件内容

失敗 難しい

改めて物件について聞くと、3年前に従兄弟の不動産会社にお願いをして売却を試みたけれども売れなかった経緯があるとのこと。

なんだか嫌な予感
調べてみたら・・・

再建築不可。道路付け無し(未接道)。山の中腹に位置する物件だったんです。
港北区は山のある地域なんですよね。

造りは、築40年が経過した木造の2階建ての戸建て。
1階・2階それぞれ25㎡ずつの狭小地。

売りづらさは、よく分かりました。

これは、一般市場に売りに出しても決まりません。
ここは素直に不動産買い取り業者を当たらないと話しは進まないとして動くことになりました。

 

見知らぬ第三者が占拠

不審者

ちょうど良いタイミングの話しで、相続が発生する少し前に同業者から不動産買い取り業者を紹介されていました。
変わった物件を好んで買う『物好きな』不動産買い取り業者という前情報

これはご縁を活かせると思い、先方に買い取りの検討をお願いしたところ快く買い取りを請けてくれるとのこと。
もうラッキーとしか言い様がないご縁。
この売却の所有権移転登記も遺言書をお願いした司法書士にお願いしようと連絡を入れてみました。

司法書士「これ、私も買いたいですね。」と。
どうやら、変わった案件であっても安く買える物件での不動産投資に興味があったようです。

司法書士の購入の意思をきちんと確認し、買い取り業者には一報を入れ司法書士に購入して頂くことに了承を得ました。
司法書士に鍵を貸して現地を見に行ってもらうことに。

ところが・・・
現地に着くと、見知らぬおじいちゃんが住んでいたようです。

「あんた、誰?」なんて言われる始末。

司法書士からすれば「いやいやいや、あなたが誰ですか?」ですよ。
連絡を受け、売主に聞いてみても「分からない。」とのこと。

話しを聞いてみると、お祖母ちゃんの恋人だったことが判明。
生前、お祖母ちゃんに「ここに住んでいい。」と言われていたから住んでいたようです。

売ることが決めまった時点で売主は私が紹介した残置物の撤去業者に前金も払っていました。
そこまでのことも話し、事態を理解してもらい売却を進める流れに戻すことができました。

 

どんどん安くなっていく価格交渉

値引き連鎖
後日、そのおじいちゃんから連絡があり「買いたい。」と。

売主に経緯と、おじいちゃんの意向を報告すると・・・
「おばあちゃんの恋人なら、タダで良いですよ。」
嬉しそうな様子で即答でした。

それならば本人同士で話してもらうのが一番良いですね。
お引き合わせすると・・・

おじいちゃん「払いたい。」
売主「タダで良いです。」
おじいちゃん「払いたい。」



何度、同じやり取りがあったことか。
二人とも譲らないのが分かり、これでは埒が明きません。
まさかこんな展開になるとは。

私からは「贈与になるからお金掛かるよ。」とアドバイス。
売主「なるほど、では売ることにしましょう。」

今度は・・・
おじいちゃん「200万円払うよ。」
売主「出し過ぎです!杉浦さん、幾らが良いんですかね?」

すごいな、この二人。

「売値は本人同士で決めて良いものですよ。」
不動産会社が口を出すことじゃないです。暴利や下手に安すぎるのは問題があるでしょう。

売主「100万円で良いです。・・・やっぱり20万円で。」
どんどん安くなっています(笑)

もうこれは『善意の応酬』ですよ。最終的には20万円で決着。

 

400万円以下の売買契約の新ルール

ルール

価格の話しもまとまり次の段階へ進むことができました。
贈与になるかな?と思っていたので、実は勢いで買主からの仲介手数料は要らないと言ってしまっていました。
言った手前、もらえない・・・
「役所回りの物件調査から契約書類一式までタダで作るよ。」と、これまた売主に言ってしまっていました。

売買契約となれば、不動産事業者として判子『仲介判(ちゅうかいばん)』を押すことは責任が発生します。その責任料が仲介手数料です。
契約や何かの調査不備があれば保障金額は青天井で支払うのが業界のルール。

買主は神経質だと聞いているし、自分から言ってしまったしな・・・
買主からも頂くわけにもいかないか・・・

そうこう考えているうちに売主からのご厚意で「その分の仕事料を払わせてほしいです。お気持ち程度になりますが。」とお心遣いは頂きました。

作業量からしたら破格も破格ですけどね。

ちなみに、400万円以下の売買取引における諸費用には特別ルールがあることは知っておいてください。
2018年1月1日より、不動産事業者が受領できる金額のルールに改定がありました。
仲介手数料の他に『現地調査等の費用』を受領しても良いというものです。
最大8万円まで仲介手数料とは別途で請求が可能なんです。

例えば、200万円の売買契約の場合
仲介手数料は、物件価格の5%が上限です。10万円ですね。
これに、現地調査等の費用で8万円まで請求が可能です。
ですから、最大18万円まで法規として認められるのです。

物件価格による仲介手数料の計算式については、ネットに溢れるほど掲載されているので「なんで仲介手数料5%も請求してんだよ。」と思われた方はご自身で調べてみてください。ここでは割愛させて頂きます。

 

なんだかんだありましたが

解決決着

契約と決済を同日に行なうこととなり、15時でのお約束になりました。
当日15時になる頃、司法書士の事務所から入電。
「買主が司法書士の事務所に来ています!」と。

何度も説明していたのに司法書士の事務所に行ってしまったんです。
そりゃあ、事務員さんもビックリしますよね。

お金の授受と所有権移転登記は同日に行うものですし、法務局は役所ですから締め切り時間もきっちり。
かと言って、もしものことがあった時のためにも登記手続きを先にするわけにもいきませんから。

なんとか時間内に漏れの無い契約行為を執り行うことができ、所有権移転登記はオンライン手続きで行ない時間の短縮を図りました。それでもギリギリ。
最後まで、事態がひっくり返ることばかりの印象深い仕事でした。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

連鎖のように続く売却のプラスの流れ。

普通の不動産会社なら取引額の相談をされた時に、買主の購入意向も確かですから200万円で売ることを勧めることでしょうね。

 

けれど、場のチカラというものは発言内容にも思わぬ影響を及ぼすもの。

私のアドバイスにも、先の展開の見誤りから無償労働の申し出にも繋がりました。

 

購入者も3度入れ替わりました。

どう考えても特殊すぎる物件内容だったにも関わらず、全員が好んで申し込んでいきました。

 

欲目がないこと、流れに抗わない、場に流されない在り方を良しとする言葉を世間では耳にします。まさにその通りの運気を呼び込んだ売却の流れでした。

 

売買金額は低くなる一方なのに、売主は満足度が高まっていました。

いろいろと私は動き回りましたが、なんだかんだと楽しんでいました。

 

結局、みんなハッピーエンドだったんじゃないですかね?

私は、全然利益になってないんですけどね(笑) こういうのもアリですよ。