8,000万円の差が出た!元不動産営業マンの聞きかじりの不動産投資知識が最もキケン!相続対策専門家が大事にしている『状況判断と優先順位』

相続対策、相続手続きで問題が起こるのは、税理士などの士業、不動産会社や生命保険会社の担当者といった外的要因となる専門家だけが原因ではありません。

 

ドラマではありませんが、身内や相続人が意図せずに問題を引き起こしてしまうことが実際にはあります。

そう考えると相続は怖いですよね?

 

特に『ちょっと知っている状態』というのは善意が損に繋がることもあるので、気を付けてくださいね。

 

このコラムで、知識だけに頼ってはいけないポイントを知って、適切な判断が行なえるようにしましょう。

 

今回は、コラム銀行の『融資しますよ』に惑わされてはダメ!地主さんを2億円以上の損から救った相続対策チームが教える専門家と言える4つの見極めポイント】の事例の続きでもあります。事例に沿ってお話しをさせて頂きます。

 

状況を見極める3つのポイントを押さえれば手元に数千万円も多くお金が入る!

 

・アドバイスは経歴と経験を聞き分けることが大事

・知識と状況を組み合わせた優先順位を大事にする

・身内の問題は当事者たちが責任をもって行動するから最善が実現する

 

 

・アドバイスは経歴と経験を聞き分けることが大事

聞き分け

今回のお話しは、所有者であるご依頼人のお父さんが運営していた『利益が思うように生めていなかったアパート』を売却して、都内の立地条件の優良な投資用不動産に買い替えを行なう際に起こったお話しです。

 

お客様背景を確認しておきましょう。

最寄り駅から徒歩30分の立地に広い土地を、複数ヶ所、所有の90代の地主さん。

ご依頼者は所有者の50代後半の息子さん。

親御さんの年齢による体力の衰えが顕著になってきたので、相続対策を講じることになりました。

 

今回のポイントは、ご依頼者の奥様が以前、賃貸専門の不動産会社に勤務していたことから端を発します。

 

奥様は営業担当者ではありませんでした。

ですから、実際に物件を調べ利益が見込めるか否かのキャッシュフローを見極め、お客様の状況に合わせた物件提案を行なう経験はありませんでした。

 

ただ、投資用不動産における社員同士の会話は耳にできる環境下に居ましたから、表面的な投資不動産の知識は得ていたようです。

 

不動産会社に勤めていたことはご依頼者であるご主人は当然に知っていた為、買い替え先となる物件判断の決定権は奥様が担うこととなりました。

 

しかしながら、私とは一度も面識を持たずご主人を通して物件情報を奥様に見てもらう流れとなっていました。

 

これが後に、≪あだ≫になるとは思いもしませんでした。

 

ここから先をお話しするに当たり、少し不動産営業マンの業務の一般的な流れについて触れておきたいと思います。

 

皆さんが投資用不動産を購入しようとして、お店に伺い希望物件の条件を提示したうえで物件紹介を不動産会社にお願いをしたとします。

 

その後、紹介される物件は全てキャッシュフロー(リスク管理も見越した上で手元に利益が残る賃貸運営であること)が成り立っている物件だけだと思っていますか?

 

悲しいまでの実態としての断言として書きます。

答えは、NOです。

 

そもそも、所有者に売却活動の依頼をお願いされた不動産会社の物件担当者でさえもキャッシュフローが成り立っているか検討せずに不動産価格を査定書として提出しています。

そして、所有者から売出価格の承諾を得て売却活動をしているのが大半です。

 

さらに、投資用不動産の購入を検討しているお客様を担当する営業マンはキャッシュフローの計算が分かっていない人間も沢山、接客に当たっています。

 

ですから仕事の流れが下記になることが大半です。

 

物件情報のデータバンクに物件条件を入力し検索。

販売図面をメールなりFAXなりで取得。

かなり大まかな≪どんぶり勘定≫で赤字にならないかを計算。

幾つかの物件の販売図面をまとめてお客様に紹介。

興味を示した物件の現地へご案内。

具体的に購入を検討したら物件状況や運営についての詳細を確認。

(それでも、賃貸運営を知らないため、かなり雑な計算が多い。)

物件購入申し込みを行ない、売買契約を締結。

 

これが、実態としての業務の流れです。

もしも疑うのであれば、まとめて物件提案はされた際に「紹介前に確認した物件提案資料を今すぐメールで送って欲しい。」と伝えてみてください。

 

資料の提出に時間が掛かり過ぎるか、驚くほど少ない資料が添付されてくるでしょう。

 

接客担当者の仕事の質を見極める為にも、初回のまとまった物件提案の際にお願いをしてみると宜しいかと思います。

 

さて、今回の事例のお話しに戻りましょう。

 

私は、賃貸経営のキャッシュフローの改善も相続対策の一環として頼まれた身です。

キャッシュフローが成り立つことを確認したうえで、今後、入居者が退去した後の入居募集も困らない条件を満たした物件を100件以上紹介しました。

 

それでも、現地を見に行くことすら一向に興味を示してもらえませんでした。

 

物件判断をしている奥様との直接のやり取りではなかったので意向の擦り合わせが出来ず、只々どれを選んでも問題の無い物件をご紹介するしかないと思っていました。

 

さすがに紹介物件数が100件を超えた頃に、ご意見を聞かせて頂けるようにご主人にお願いしてみてました。

 

すると・・・

「自分(奥様)の好みに合う外観や内装の仕上げの物件を紹介してほしい。」

「20歳の娘さんを住まわせたいとも考えているので、娘さんが住みたいと思える間取り、設備仕様の物件が良い。」

 

立地条件やキャッシュフローが良いのが≪当たり前≫。

その上で好みに合う物件が出てくるまで探したいというものでした。

 

これは一見、通常の投資用不動産の購入においては正解なのです。

物件に対し愛着(理解と魅力)があること。

副産物的利用価値も見込めること。

 

奥様が勤めていた不動産会社で見聞きして知っている知識や≪買うなら、こういう物件≫といった情報、それ自体に間違いは無いのです。

 

ただ、状況という検討要素は本やネットでの知識や、勤務先の会社員同士の話しには盛り込まれていないことは≪タチ≫が悪いのです。

知っているからこそ起きてしまう善意からのトラブルの一つです。

 

相続対策は、専門家だけで進めるには限界があります。

ですから、当事者意識、参加意識は必要不可欠であり、有り難い事この上ない姿勢です。

 

ただ、100件以上も紹介していたのですから、ご依頼からかなりの時間が費えたことは想像に耐えないかと思います。

 

再度、ご依頼者の状況を確認してみましょうか。

お父様が90代であり、年齢的衰退が見てとれるようになったことを心配して具体的な相続対策に動き出しました。

 

つまり、今回の買い替えにおいて重要視しなければならない優先順位を理解していなかったのです。

 

これが経歴と経験の差です。

 

相続対策における最優先事項は3つ。

所有者(今回は、お父さん)がご存命であるうちに。

判断能力があると認められる健康状態のうちに。

対策手続きをすべて完了しなければならないこと。

 

また、奥様は不動産会社と直接やり取りをすることで営業トークを聞かされるのではないかという当然の不安もお持ちのようでした。

 

不動産業界は世間的なイメージは確実にグレーです。

担当者を信じきって油断してしまうよりも、信用はしても油断せずに参加していく堅実な姿勢は賞賛に値すると言っても宜しいかと思います。

 

投資用不動産は何よりも数字が重要視されますので、ご提案した物件は物凄い早さで次々と購入申し込みが入ってしまいました。

空室リスクなども見越した価格設定の物件ですから現地を見に行かなくても申し込みが入るのです。

 

・知識と状況を組み合わせた優先順位を大事にする

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相続対策で最もしてはいけないことは、≪時間の許す限り好きにやりたい≫という考え方です。

 

親御さんの体力面や健康面で不安がある時には、当初の目的(相続税の減額とお金回りの改善)をいかに早く手続きするかが最重要項目です。

 

そこを見誤らないようにしてください。

 

物件探しも手続きも、ゆっくり行なっている場合ではないということです。

人の命の期限は、誰にも計れるものではないのですから。

 

趣味嗜好に走った物件選びをしたいなら相続対策ではなく、相続手続きが終わり税の減額が実現しキャッシュフローの改善が現実化してからにしてください。

 

こう申し上げては乱暴にはなりますが、相続手続きが終わって余ったお金やこれから入ってくるお金で好きに買えば良いと考えています。

 

趣味嗜好で迷っている間に相続が起きてしまったら、減額できたはずの相続税は幾らになるのか?

その天秤を常に持ち合せてください。

 

相続税の改正により、『相続対策は当事者が元気なうちに!』と世間で言われるようになったことで、もしもの際の話し合いが切り出し易くなってきたと思います。

 

相続対策と言われると健康面や年齢的不安など見えづらい期限が差し迫った状況を想像しますが、いくらでも時間的余裕は作れます。

 

被相続人(財産の名義人である当事者)と相続人の双方が問題意識を持てたら、誰もが元気なうちに話し合えることで、趣味嗜好を反映させた『好きな手立て』をすることが出来るわけです。

 

優先順位が決められてしまうよりも、自分たちで優先順位を作っていけると良いですよね。

 

元気だからこそ時間に余裕がある時に、親御さんの今現在の想いも、今までどんな想いを受け継いで(相続して)きたのか、相続した後のことはどんなことを望んでいるのか。

ご本人から直接聞ける間柄を築いて頂けたら幸いです。

 

以前コラムで挙げました【大手不動産会社に断られても、この2つを押さえていれば大丈夫!相続対策専門の不動産会社が教える≪専門家を動かすコツ≫】では、不動産売買と所有権移転手続きをしたその日の夜に親御さんが亡くなりました。

 

ご依頼者から希望された当初の計画では2日も手遅れになるところでした。

こういった経験があるからこそ、しっかりと伝えなければいけないことがあります。

 

生きていても判断能力が無い、と有資格者から言われてしまえば不動産の購入はおろか、売却さえ認可が必要となり手続きが困難になり長期化、更に市場や現実に則したまともな金額での売却は現実味をおびなくなります。

 

『状況の配慮のない知識による物件選択』ではなく、確実に買い替えを行ない安定した賃貸経営とキャッシュフローを生み出す資産を手にすること、これが相続対策の使命ともいうべき目的です。

 

そもそも『都内、最寄り駅徒歩10分以内、キャッシュフローが成り立つこと』これが満たされた物件であれば、将来、好みの物件に買い替えたい時に売却に手こずることなく売れます。

つまり、出口戦略と呼ばれるものも兼ね備えていることも見落としてはいけません。

 

これを言うのはおこがましい話しではありますが、お客様の状況、賃貸運営の経費計算、空室リスクまで考え、キャッシュフローが年間で数百万円~1千万円台で向上する物件を100件見繕うことの大変さを当たり前と思ってほしくはありません。

 

取り敢えず良さそうな物件をFAXやメールで紹介して、興味を示したものを吟味する一般不動産会社と同列で考えられてしまっていたので話しが通じない状態になっていました。

 

・身内の問題は当事者たちが責任をもって行動するから最善が実現する

参加

相続対策と今現在の状況を理解して頂く為に奥様に説明をしました。

しかしながら、何を話したかよりも誰が話したかで言葉の浸透率、説得力は変わります。

 

奥様にご納得いただけるようお話し合いをして頂くことは、不動産の所有者であるお父様が肉親であるご主人にお願いしました。

 

プロと言えども所詮は他人です。

他人では作用できない心の部分は多くあるものですよね。

相続対策は、何についても専門家が舵取りを行ない、一見、無駄がなく作業が進めば良いというものではないと思っています。

これからも家族、親族間でのお付き合いがあるからこそ、お手間を取らせてしまうことはあってもご協力をお願いしています。

 

相続の根幹は、当事者の心や人間関係が最も大事なところで働いてくるものだと思っています。

 

今回の事例での時間の消費がもたらした≪あだ≫は融資承認という壁を作ってしまいました。

昨年、世間を賑わせた『スルガ銀行問題』が金融機関全体の借入融資承認の基準を高めたことです。

 

時間は、状況です。

身内の身体、お気持ちといった状況は勿論。

世間の情勢という状況変化も引き起こします。

 

こういった状況変化に応じて知識を活用し、優先順位を都度、決めていくのが最善案に繋がります。

 

事例での具体的な状況変化がもたらしたものをお話ししましょう。

 

今回のご依頼者に対し、ある地銀が借り入れ期間を関東圏の金融機関よりも9年も長い融資期間で貸してくれるという支店長決済が下りました。

 

ご主人の協力のおかげで奥様のご納得も得られ、改めて物件をご提案し購入申し込みまで進むことができました。

 

しかし、その矢先にスルガ銀行問題が起こり、融資承認を出した地銀の本部から融資対象エリアをとても狭めてしまい、融資対象外になってしまったのです。

 

そのため、他の金融機関で一般的な融資期間での融資をお願いするしかなくなってしまいました。

 

これにより、買い替え予定の物件の年間900万円ものキャッシュフローの見込みが、他の金融機関での借り入れとなったことで500万円にまで落ち込んでしまいました

 

融資条件が変わってもキャッシュフローが見込めること自体、有り難い話しではあるのですが、悔しいものは悔しかったですね。

 

いかがでしょうか?

状況の見極めの3つのポイントと、それがもたらすもの。

 

・アドバイスは経歴と経験を聞き分けることが大事

・知識と状況を組み合わせた優先順位を大事にする

・身内の問題は当事者たちが責任をもって行動するから最善が実現する

 

大事なことは見知った知識や情報を状況と照らし合わせることです。

 

本やネット、職場やお知り合いからの情報は、その事案の状況や対象者の方々が重んじた価値観は何かをしっかりと押さえたうえで身に付けるように心掛けてくださいね。